鏡を磨いて ― 山花ひとりがたり

薬学生です。日々の暮らしを「愉しく」したくて、小説・エッセイ・日本思想に触れた感想を綴っていきます。

改めて思う。辞書ってすごい—『舟を編む』

 私が小説を買う動機は、大体下調べなどせず、本屋で「おっ」と目に留まったからというものが多いです。今回取り上げる、三浦しをんさんの舟を編むも、大学構内の書店に通っていて、定番の書籍として平積みされているのを見て、本を読むのが好きな身として避けて通ることが出来ないと思うようになったからというものです。

 こういう選び方をしていると、一割くらいの確率で、本屋の「売りたい」と私の「読みたい」が合わずに結果損してしまうことがあります。しかし、『舟を編む』に関していえば、私の懸念はまったく不要でした。

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王朝文学の甘美な世界へ—『少将滋幹の母』

 久しぶりに谷崎潤一郎の小説を読みました。高校生の自分に『細雪』『春琴抄』で初めて谷崎潤一郎を知った私は、『陰翳礼讃』で東洋的な美を教えてもらい、川端康成と並び日本の美しさについて考えるうえでの大きな指標にさせて頂きました。

 今回読んだ少将滋幹の母という作品は、そんな東洋的な美を味わうだけでなく、谷崎の美意識にも迫ることが出来るような作品なのです——。

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自信を持って「好き」を語っていいんだ―『「好き」を言語化する技術』

 再度病み期から復活し、気の向くままブログを綴っていると、時折ある悩みにつきあたります。

 「陳腐な言葉ばかり書きなぐっとるなぁ……。児玉清三島由紀夫みたいな発想が出るわけないし……」

 「何のために書いてるんやろか……」

みたいな具合に。

 心の底にこの感情を抱えつつ次の積読を求めて書店を散歩していると、ある一文が私に主張してきました。今回感想を綴る三宅香帆さんの『「好き」を言語化する技術』の副題である「推しの素晴らしさを語りたいのに『やばい!』しかでてこない」です。

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お弁当作り。それとよもやま話

 この間、お弁当作りを始めてみました。

 今までお昼ご飯と言えば、学食なり近くの料理屋に行ってお腹一杯食べまくる具合でしたが、いつもと比べて少量に、ご飯とお味噌汁という、きわめて簡素なものにしました。作ろうと思ったきっかけは、向田邦子 暮しの愉しみ』という本の中に、美味しそうな海苔弁が出てきて「これならウチにも作れるかも」と感じたことでした。

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右太衛門の抑えた演技が光るー『赤穂浪士 天の巻・地の巻』

 「映画談義」と題して、初めての映画鑑賞記という趣向でいきます。

 前回「忠臣蔵熱、ふたたび」と題して、にわかに忠臣蔵ブームが再燃したことを綴りました。仇討という大願を秘めた赤穂浪士とそれに関わる人物の物語が好きになっただけでなく、必ず壮観なオールスターに仕上がっているため、興行としても楽しみが広がるというのが主な理由です。

 そんな忠臣蔵映画の中で特に好きなものを、何回かに分けて紹介しようと思います。まず一つ目は、東映の北の御大・市川右太衛門が大石に扮する赤穂浪士 天の巻・地の巻』です。

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忠臣蔵への熱、ふたたび

 実は少々昔、時代劇にはまっていたことがありました。アニメでは西尾維新の『刀語』、ドラマではCSで放送されていた『隠密奉行朝比奈』をよく見ていた記憶があり、いずれも日常では味わえぬ世界に憧れたものです。時代劇には様々なお話がありますが、特に私が好きだったのは「忠臣蔵」でした。

 あれから十年経ち、たまたま動画配信サービスで東映の時代劇—赤穂浪士を「ああ、よく見ていたものだなあ」と見ていたら、その昔傾けていた情熱が不意に再燃してまいりました。

 かくして第二次忠臣蔵ブームがおこった私は、紀伊国屋書店である本を見つけました。今回紹介する、春日太一氏の忠臣蔵入門—映像で読み解く物語の魅力』です。今回は忠臣蔵への熱、ふたたび」と題し、本書の紹介と私の第二次忠臣蔵ブームについての雑感を綴りたいと思います。

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読書人の道しるべ—『ひたすら面白い小説が読みたくて』

 本当にお久しぶりです。藍山花です。

 少し精神を病み読書など趣味全てから遠ざかっていたのですが、ようやく文字を読むことに抵抗が無くなってきたので、思い切って何か文章を書いてみることにしました。書き始めてみると、今まで心の中で鬱々と溜まっていたものが、一文一文に感情を入れるごとにみるみる削り取られていく感覚を味わい、「ああ、今の気持ちを書き出すことって、大事なのだな」としみじみ感じました。

 今回は、一年ぶりの活字本になった、児玉清さんの『ひたすら面白い小説が読みたくて』の感想を綴りたいと思います。

 

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